今回は、塗り絵の活動でもっとも重要な、「褒めること」について具体的な参考例をお伝えしようと思います。
前回の投稿(「塗り絵の活動をおすすめする理由」)では、とくに福祉分野の支援する側の立場から、塗り絵の活動がなぜおすすめなのかを具体的な例をあげてお話しました。
今回は、塗り絵の活動を始めたと仮定して、いちばん重要な、「褒める」ということに焦点をあてていきたいと思います。
塗り絵の活動でもっとも大事なことは「褒めること」
これが最も大事です。これだけやっておけば、他にはなにもしなくて良いくらいです。
塗り絵をすることを楽しんでもらうためには、「共感」が重要なキーワードになってきます。「塗り絵をすると楽しい」「いい気分になる」「もっともっとやりたくなる」と思ってもらえると、どんどんその世界にハマっていく人が増えます。
人から褒めてもらえると嬉しいし、共感してもらえると嬉しくて生きる力がわいてくる。それはほとんどすべての人に共通する感覚です。
そのなかだちに、塗り絵はとても有用です。
色使いというのはとても個性が出る部分で、色の組み合わせには優劣などなく、「いくらでも褒めちぎることができる」のです。
私はもともとそんなに人と接することが得意なほうではなくて(幼少期はひとりで絵ばかり描いていて)長じてなぜか絵の先生になり、この仕事を始めたころは「何を喋れば良いのやら」と、途方に暮れていました。「先生、この絵どう?」と生徒さんに尋ねられても、「う~む」という感じ。「まあまあ」とか言ってた。ほんとに良いと思えないと、なかなか言葉がでてきませんでした。褒め下手だったと思います。
それでもこの仕事もかれこれ30年。それなりに言葉のストックもあるかなあと思いますので、少々(かなり)恥ずかしい気はしますが、手の内をお見せしようと思います。
「すごいね~」「素敵ね~」「がんばったね~」にプラスして。(塗り絵を褒めるためのキーワード)
絵画の指導を補助して下さる施設職員の先生方は、ほんとうにとても褒め上手です。感情豊かに「すっご~い」「うわ~素敵、がんばったね~~~ぇ」と目を丸くし表情を添えて。褒められた利用者さんはご満悦です。
この「褒められてうれしい」のやり取りが、塗り絵の最大のモチべーションになります。(まあ塗り絵にかぎらず何だってそうなんですが)、塗り絵はその「褒める」ということが、やりやすいのです。
いかようにも褒めることができる、ということですね。
最大頻出キーワード、「すごいね」「素敵ね」「がんばったね」。
もちろんそうですそうなんですが、この3つの言葉に加えて具体的に褒めるためのキーワードが加われば、もっともっと活動を楽しくできますし、利用者さんの塗り絵のやり方に「がんばる方向」を指し示すことができるのではないかと思います。
塗り絵の褒め方の例①(やさしい感じ)
では例として、この塗り絵をホメてみます。
「やさしい感じだね~、〇〇さんの人柄がでているね」
「〇〇さんの塗った色を見ていると優しい(楽しい・ウキウキした)気持ちになるよ」
「塗り方が柔らかくてきれいだね」
「青と黄色の組み合わせって良い感じだね。これ〇〇さんが考えたの?」「すごいねそうなんだねセンスいいね~」
「紫と茶色の組み合わせなんて、なかなか思いつかないね。〇〇さんならではだねカッコいいね」
「〇〇さんの色使いが本っ当に好き。ず~っと見ていたくなるよ」
「これは〇〇さんの世界だね。とても素敵だね」
塗り絵の褒め方の例②(荒い・粗い=力強い)
こういうケースも、憶することなくホメましょう。
「すごいね力強いねカッコいいね」
「大胆さが魅力だね」
「男性的な感じ。さすがだね」
「生命力にあふれているね」
「〇〇さんの色使いに元気をもらえるよ」
「すごく目立つ表現で、なかなか出来る人いないよ~」
「色の使い方が鮮やかだね。〇〇さんの持ち味だね~」
「生き生きした感じが伝わってくるね」
塗り絵の褒め方の例③(細かさと丁寧さ)
細かさが持ち味のケースはこんな感じで
「すごいねこれ〇〇さんが塗ったの?」
「ぜんぜんはみ出してないね。完璧だね」
「すごく上手。手先がとても器用なんだね」
「この丁寧さはすごいね。驚くね」
「〇〇さんにしか出来ないことだね」
「色の選び方が最高。どうしてこんな組み合わせが思いつくの?」
「バランスが本当に良いよね」
「こんな感じで完成したら、すごい作品になりそうだね」
塗り絵の褒め方の例④(色のかさなりと味わい)
なんとも言葉にしづらい「味」のようなものはこんな言葉で。
「わ~、なんか雰囲気がいいね」
「夢の世界って感じだね」
「〇〇さんの夢(記憶)の中のイメージなのかな」
「〇〇さんにしか出せない味わいがあるね」
「シンプルな色使いが、すごく効果的だね」
「色と色とが重なっているところが、すごく味わいがあって魅力的になってるね」
「もっと〇〇さんの世界を見てみたいな」
「線の感じが独特だよね」
「ブルー系でまとめていて、大人っぽくて良い感じだね」
塗り絵の褒め方の例⑤(持続時間や行為そのもの)
集中できる時間が長くなっていることや、塗り絵に取り組んだこと自体も言葉にして褒めましょう。
「わ~、もう15分以上集中していますね。すごいですね」
「毎日少しずつ続けているんですね。継続は力なりですね」
「塗り絵をする時間が増えているみたい。楽しそうですね」
「〇〇さんの集中力には誰もかないませんね」
「〇〇さんはすごいなあ。どうやったらこんな風にできるの?」
「コツを教えてくれない?」
「〇〇さんを見習わなくちゃ」
「やるたびに上手くなっているみたい」
「〇〇さんの違う一面を発見したよ~」
40例ほど挙げてみました。
たぶんこんなことばっかりいつも言っているので、あらためて文章にすると、一緒にお仕事をしている職員の先生には笑われてしまうかもww。
こうして書き出してみると気づくことがあります。「〇〇さん」と名前を呼び掛けて、その方がその方であることを肯定し、その考えや世界観に興味を示す、ということをどうやら私はしたいと思っているようです。
ちなみに塗り絵をホメる時、塗っている人は机に向かっていて作業中で、私は斜め後ろからささやくように言います。独り言みたいな感じです。対面して言うのではないので、照れくささはちょっと減ります。面と向かってホメるのが苦手な方にはおすすめの方法です。
ホメられた人はリアクションや返事はほとんど無くても、お顔がちょっとだけ「にんまり」してたりします。(←かわいい♡)。
ちょっと恥ずかしいですが、ご参考になれば。そして楽しい活動の一助になればと思います。
(今回使用した参考画像は「シンプルぬりえ」のシリーズから印刷できます。あわせてお楽しみください)。
最後に
1回の塗り絵の活動で「おひとりあたり3ホメ」
を心がけています。
拙文読了感謝いたします。
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(同年11月26日追記)
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この記事の内容がお役にたてるならば、ということで、褒め方の例文をマニュアルとしてまとめました。
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